野湯(のゆ)という言葉をご存じでしょうか。
野湯とは・・お湯が自然の中に自噴し、そのお湯を利用し入浴出来、商業運営ではなく、地元の愛好家が管理したり、又は全く管理されていない場所を言います。
北海道は野湯のメッカ(懐かしい言葉)ですが、北海道を代表する野湯の一つに世界自然遺産の知床に「羅臼(らうす)温泉 熊の湯」があり、私も今迄何度も利用させて貰いました。
しかし、この熊の湯は地元の方と旅行者との間でトラブルが多い事でも知られており、ネット上を検索すると様々な意見や苦情が散見されます。
なぜそんな事になるのか。
今回はそんな事を含めて熊の湯に出掛けたお話です。
8月12日PM9時、仕事が終わった後に自宅を出発します。(画像は愛別R39上)
自宅から300km以上離れた「羅臼温泉 熊の湯」への早朝入浴と、出来れば毎朝行われているその温泉の掃除に参加したいと考えたからです。
途中途中で仮眠を取りながらノンビリ走っても夜明け前のAM4時には到着するでしょう。
上画像は美幌(びほろ)の市街地です。深夜に走る楽しさは自分のペースでゆっくり走れる交通量の少なさと、静まり返った街並みを眺める事にあります。
旭川方面は蒸し暑かったのでオープン走行していましたが、石北峠を超えて北見方面に来ると肌寒くなり、時々幌を閉めて走ります。
上画像は斜里の「道の駅うとろシリエトク」横を通過した際のもの。シリエトクとはアイヌ語で陸地の突端を示す言葉で、つまり知床を意味します。
(シリエトク→ その昔、和人が当て字にしたら →シレトコ となった)
道の駅のPAは新型コロナ問題の影響で例年に比べ結構な空きが有りました。
いつもはビッシリなのですが。。
上画像は知床横断道路の知床峠到着直前の場所です。目の前の暗闇から羅臼岳(1,661m)が山頂に雲をのせてクッキリをそのシルエットを見せます。
日中は賑わうこの観光道路も夜中は静まり返っています。
AM3:40 知床横断道路の羅臼側。見た事も無い雲。画像右側は海で、黎明に肉眼で見る風景は幻想的です。交通量は皆無。車から離れるのも怖い厳かな雰囲気。
AM4時、予定通りに熊の湯に到着しました。道路淵が駐車帯になっています。
カメラの撮影機能で明るく見えますが、実際は殆ど真っ暗です。
(この日の日の出はAM4:21)
道路を挟んで向かいには人気の「羅臼温泉野営場」があります。
昨年はココを利用し、羅臼界隈を歩きました。今年はどうしようかな・・
駐車帯には車が停まっていたので先客かな?と思いましたが、「清掃中」の看板が入り口に下がっていました。自分もお手伝いすべく早速向かいました。
完全野天の男湯に対し、女湯は外から見えないようになっています。
到着しましたら地元の漁師さんが既に湯舟の掃除を終え、お湯を溜めているところでした。確か通常はAM5時から掃除が始まる筈なのですが、この漁師のお父さん、今日は漁が休みなので早く来て済ませてしまったそう。
私が何かお手伝い出来るか聞きましたが、もう大体終わったとの事でしたので、その辺に落ちているゴミ・・(サロンパスとか何で落ちているんだよ・・・ちゃんと持ち帰れよな~)を拾うなどしました。
前は完全に手作業で湯舟などを掃除していたそうですが、今は機械化し、掃除が随分楽になったとの事です。
今回は特別に女湯も見せて貰いました。屋根があるのは脱衣場所だけで、お湯に浸かる際は空が見えますので、男湯には負けるもののナカナカ開放的です。
男湯の脱衣所。手作り感が何とも楽しいですね。私はこういう風に皆で大切に維持しているという野湯が大好きです。壁には何やらゴチャゴチャ書いてあります。
熊の湯入浴十ヶ条。私なりにかいつまんで書くとこんな感じです。
・まずこの十ヶ条を読んで下さい
・湯舟に入る前は体を洗う事(掛け湯でOK)
・熱い場合は掛け湯を繰り返し、慣れる事
・熱いと感じた場合でも勝手に沢の水を入れて湯温を下げない事
・酒を持ち込まない事
・水着を着用しない事
・沢の水を入れた者は必ずその者が責任を持って止めて出る事
・お湯は飲用できます
・掃除している場面に出くわしたら手伝う事
・ゆっくり楽しんで疲れをとって下さい
ネット上で熊の湯の利用者のレビューを色々見ると、「頭ごなしに地元の人に怒られた」「露骨に嫌な顔をされた」「意地悪をされ最悪の気分になった」というコメントを多数見る事が出来ます。
なぜそんなトラブルが頻発してしまうのか、今回は地元の方に代わりその説明を致します。
熊の湯の清掃後はAM7時迄は入浴が出来ませんが、手伝った人はその場にいる地元の方の考えで特別に入浴させて貰う事も出来、今回私はOKを貰いました。
地元の漁師のおじさんのお話をまとめるとこんな感じです。
・兎に角観光客で一般的なマナーがなっていない人が多過ぎる。
・この温泉を維持するのに大変なお金と労力が掛かっている。
・10年以上前にはポンプなどが壊れ、その他の損傷も含め
200万円以上の募金を集めて補修した事もある。
・熊の湯愛好会の方は会費を払い、様々なものを購入している。
例えばデッキブラシや桶などの備品の購入は勿論、
今年は50万円もするお湯のタンクを買っている。
施設維持の為の設備・土木・左官工事を随時プロに頼んでいる。
脱衣所にある募金箱の募金では全く足りない。
などなど・・仰りたい事は随分沢山ありました。
私もこの熊の湯を何度か利用させて貰っていますが、
掛け湯をしない人がいますね。こういう方は自宅でも
掛け湯をしないで湯舟に入るのでしょうかぁ~???
そんな苦労話や、何十年も前に修学旅行で私の地元旭川に行った時の思い出話など、色々としていると「もう少しで厳しい人が来るよ」とおじさんが一言。
それを聞いた私はすぐに「早く入浴を済ませて帰りたい」と焦りました。
厳しい方がどんな方か、よく知っているからです。私の様な外部の人間がマンツーマンで対応するのは辛い・・・
ところがおじさんとの世間話がついつい長引いてしまい、入浴直後にその方とバッタリ出くわしてしまいました。
「あんたはどこから来た?」「新型コロナは大丈夫だろうな!」「マスクはどうした!(入浴直後でマスクはしていない)」等といきなりジャブではなく3連打のストレートパンチをくらいました。
一緒にいた地元のおじさんが「掃除を手伝ってくれたから風呂に入って貰ったんだ」とすかさずカバーしてくれ、事無きを得ましたが、羅臼の漁師さんは見た目もその筋の方に見えますし、体格も良いのでかなり圧力を感じます。
まあ、羅臼では新型コロナに感染した人はゼロという事で、ピリピリしているのは分かりますが、いきなりこういうセリフを仰るという事は、多分沢山の観光客の方にもこのセリフを浴びせている事でしょう。
この「厳しい方」とも直後にどうにか普通にお話が出来る雰囲気にはなりましたが、知らずにいらした観光客の方がこんな目にあったらその日一日は相当気分が悪くなるでしょうね。
熊の湯の利用でなぜ沢山の苦情が出てしまうのか・・それは
・利用者のマナー違反
・地元の方の果てしなく大きな熊の湯愛 の対立です。
どうすべきかについては様々な論議が有るようですが、私は現在のままで良いと思っています。
「マナーが悪い人がいる→怒る人がいる」
「緊張して利用しなければならない」
これで良いのだと思うのです。怒られたりした方はその時気分が悪くなるかも知れませんが、少し時間が経てば良い思い出になるのではないでしょうか?
一昔前の日本では近所でガミガミ言うおじさんがいたものです。今は・・都会の場合、ただ挨拶するだけでも変質者扱いで警察に通報されたりしますからね・・
ここ熊の湯には懐かしい人間関係が存在しています。
確かにマナー良く利用しようとしていてもイキナリ上から目線で色々言われる方も多いようですが、そこは羅臼の皆さんの努力を想像して我慢し、それ自体をレジャーと考えて楽しんで下さい。m(_ _)m
それよりも今回は私が「コロナ問題」で指摘を受けたのはショックでしたが・・
同じ北海道でも地域によっては医療施設や人員の不足の問題があるので切実なのです。
キャンプ場や観光施設では道外からいらしたと思われるナンバー(首都圏ナンバーも非常に多いです)の車両を普通に見掛けますが、地元経済の事を考えると来ないでとも言えません。
早くワクチンや薬が市場に出回ってインフルエンザ並みになれば良いのですが。。
最後に・・
募金箱が脱衣所に用意されていますが、募金は大変助かるので100円で良いので入れて欲しいとの事でした。
観光ガイドブックには利用料金が「無料」としか書かれていない事が大半ですが、その下に「出来れば協力金を入れて下さい」と書いて欲しいですね。
誌面上の見栄えで「無料」と書きたいのでしょうけれども。。
あと、どうしても地元の方と触れ合いたくない方は、真夜中、無理なら午後あたりに訪れると良いかも知れません。漁を終えて帰って来たお昼前後が最も地元の方が利用する時間帯だそうです。
さぁ~、幸先よく熊の湯を楽しみました。続いては同じ羅臼の「相泊温泉」という野湯に向かいます。その前に羅臼港で一枚撮影。海の向こうに国後島(くなしりとう)が見えます。
現在ロシアが実効支配している日本固有の領土です。
羅臼の街から20km走ると相泊温泉があります。
上画像は相泊温泉前にて。駐車スペースと公衆トイレがあります。
海岸線にブルーシートで覆われた小屋掛けの温泉が見えます。この小屋は地元の方が羅臼町役場から依頼を受けて管理しています。秋季~冬季は建物が撤去され、波で石が湯舟に入り込むので、入浴は出来ません。また台風などで小屋が倒壊したり、大きな石などが湯舟に入り込み、入浴出来ない事もたまにあります。
詳しくは→をご覧下さい。今日の相泊温泉
海の向こうには国後島が見えます。
湯舟は男女別になっておりますので女性も安心です。
湧出する源泉は50℃あり、湯舟は大変熱いです。
塩分を含んでおり、なめるとしょっぱいです。
沢の水を入れて適温にしますが、入浴出来る迄に15分以上掛かりました。
私が野湯を好きなのは、地球の息吹を直接感じる事が出来るからです。
こんな素敵な事がありますでしょうか!?
時々温泉付きの住宅をTVで見掛けますが、本当に羨ましいです。
熊の湯と違い、気楽に利用出来る感じですが、熊の湯と同様にサロンパスなどのゴミが落ちています。何故持ち帰る事が出来ないのか・・本当に不思議です。
相泊温泉のすぐそばにセセキ温泉という「北の国から」でも使われた野湯がありますが、法人が管理しているので自由に入浴は出来ません。断りを入れる必要が有ります。また満潮時も湯舟が海面下に入る為入浴出来ません。
今回は湯舟が見えたものの、早朝だったので入浴しませんでした。
セセキ温泉そばにて。北海道ではキタキツネが普通に見られます。誰かがエサを与えているせいで道路に度々出てきますので気を付けましょう。
今日はこの「熊の入った家」(本当にヒグマが侵入してきた)のキャンプ場でキャンプ(キャンプ場は画像左)をしようと思っていたのですが、結構な数の利用客の方がいたので諦めました。
旅をしていて普段見ない青看板を見ると遠くに来たなあ・・と実感します。
AM6時過ぎ、食事をするべく「純の番屋」さんに来ました。AM8:30が開店でまだ早く、お店の人に断り、駐車場で小一時間ほど仮眠して待ちました。
店名の由来は建物が「北の国から」で使われた番屋を再現したものだからです。
番屋とは漁師が海岸に建てた作業場兼宿泊所です。
開店と共に入店。お店の内部はこんな感じで賑やかです。
メニューの一部です。羅臼で揚がった海産物を頂く事が出来ます。
このお店に来たのは3度目かな?いつもと同じお一人様用カウンターに座って国後島を眺めながら食事をする事にします。
このお店のオーナーは1969年に甲子園に捕手として出場した事があるそうです。
カニとウニの二色丼を頼んだのですが、ウニの入荷にもう少しだけ時間が掛かるという事で、(注文後にウニが入荷しました) ウニの量が少なくて済む「羅臼丼(税込み2,980円)」を頂きました。ネタが美味しいのは勿論ですが、お浸しなど付け合わせのおかずも美味しいのです。
このお店の方は全員明るくて楽しく、非常にオススメです。
AM9時。さーて・・今日の今後はどうするかな~。混んでいる時期なので、まずはキャンプ地を決めなくては。。
羅臼オートキャンプ場に来てみました。コチラは羅臼の外れにあり、いつ来ても空いているので、今回も利用しようと思って来たのです。
まあまあ空いていましたが、天気も良く、まだAM10時にもなっていないので、オープンドライブを楽しむ事にしました。キャンプ場は適当に決めよう。
R244 斜里岳が向こうに見えます。気温も22℃位でオープンドライブには最高の天気です。好きな曲を空に向かって口ずさみながらノンビリ走ります。
久々に川北温泉(野湯)に行ってみようかと思いましたが、5kmの砂利道を走るのが嫌になってやめました。最近マッドガードを補修したばかりですので。
私が10年前に訪れた時の川北温泉。数十年前までは建物があったのですが、現在は上物が無い状態で地元の愛好家が管理している素晴らしい野湯です。
大空町東藻琴にある「道の駅ノンキーランドひがしもこと」。2017年にオープンしました。何度か利用した事がありますが、トイレがとても綺麗なので通り掛かる度に利用させて貰っています。
調子に乗って走っている内ににわか雨に降られたり、キャンプ場は混んでいたりで、結局家に帰る事にしました。。これが一人旅の良い所!?
(ちなみに小雨程度だと風の力で車内に雨は入って来ません)
キャンプ場が特に混んでいるのはキャンプブームの上、新型コロナ対応のレジャーとなるとキャンプを選択する事が増え、また小学校などの夏休みが新型コロナの影響で遅くなり、8月になってから始まった所が多く、一時にキャンプをする人が集中しているのが理由の様です(北海道の場合通常は7月24日位から始まるのが普通)
PM3時。地元に帰ってきました。
我が地元は稲作が盛んです。
そしてもう稲穂は
頭を垂れつつあります。
秋が迫っています!
ではまた!^^/